医学の話題
癌退治,他
T
pp.26
発行日 1958年5月15日
Published Date 1958/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910596
- 有料閲覧
- 文献概要
癌の研究に対する日本医学の貢献は大きい。有名な山極博士の“タール癌”をはじめ吉田博士のオルトアミドアゾトルオールに発する“吉田肉腫”中原博士の“トキソ・ホルモン”一何れも世界の癌研究史上にのこる業績である。
しかしこれらの立派な研究だけでは何にもならない。これを生かす政治というものが是非心要である。結核その他多くの伝染病による死亡者が,抗生物質の出現や公衆衞生の発達で激減し,相対的に癌の死亡率が上って来た。現在は脳血管障碍についで第2位である。昨今の病理学会で阪大から発表されたところによると,戦後10年間,日本全国の癌,肉腫など悪性腫瘍の剖検例38107の中胃癌が20%近くでトツプ,次いで白血病の10%余,以下肺・子宮・肝癌の順とのことである。
この癌に対して,1月11口西銀座アラスカで,24名の癌研究の権威者が集つて“対癌協会”を作り,近く具体的な運動に乗り出すことも決めた。また1月22日丸の内工業クラブで“癌研究会後援会”も設立され,これは現在の癌研に,400余のベツドを持つ総合病院の建設も申し合わせた。更に口赤中央病院はじめ各地に“癌治療センター”が作られるなど,漸く日本の癌退治も本格的なものになつて来たらしい。
Copyright © 1958, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.