心起こし身体起こし・8
ウツとドラキュラはお日様で退治
河津 孝一
1
1心と身体のカウンセリング健塾
pp.802-803
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901890
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ドロドロロ~,ドアを開けるとポツンとひとり,台所の蛍光灯の補助電球,薄ら明かりの中に女性がうつむき座っていた.部屋のカーテンはすべて閉ざされ,日の光りを遮断.ドロドロロ~,怪談ばなしの序奏になりそうな,尋常ではない環境.脳血管障害後遺症,左片麻痺,ウツ傾向の初老の女性,「これは手ごわいだろう」と思ったのが,N代さんとの出会いだった.ところが意外に,簡単にこの環境は変化していった.
障害を患っての一人暮らし,気分が落ち込むのも当然,寝たきりになったらおしまいと思ったのか.いや,ベットに寝ていてもだれかが世話をしてくれる訳でない,そんな厳しい現実がトイレに近く食事に便利な台所の椅子に一日中座るという,合理的な判断をN代さんにさせたのだと思われる.寝たきりを妨ごうと単にベットから起こし,車椅子に座らせただけで,一日ボンヤリさせ,寝たきりゼロだと豪語するトンチンカンな施設病院もあるけれど,台所で一日中座っているのは同じ状況だとN代さんに理屈を言っても仕方がない.それにしても全てが暗い,「部屋」「表情」…明るいものを探したかった,何でもいい,何かの賞状や趣味のもの,ほめれるような,気分を明るくしてくれるような話題がほしかった.しかし特に目に付くものもなく,ひとまずマッサージをはじめることにした.
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