随筆
看護は芸術か—ある看護婦の受講報告から
会田 謙吉
1
1国立小千谷療養所医務課
pp.45
発行日 1958年5月15日
Published Date 1958/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910603
- 有料閲覧
- 文献概要
先日ある講習会に出席した看護婦の報告書に「看護は職業であり,科学であり,芸術である」ということが述べてあつた。たしかに職業であり,科学であることには少しも異存はない。しかし,「看護が芸術である」ということは私には耳新しい言葉である。それは看護を余りにも美化しすぎた,自己満足的な,そして不調和な感じのする表現ではないだろうか。こゝに深い興味と疑問を感じたのである。
その後看護婦と座談会をもつ機会を得たので,その受講者に,「看護が芸術である」ことのわけをきいてみたところ,「肉体的にも精神的にも障害された病人を,だんだん健康な状態にひき戻すこと」だときかされたという。勿論これは,医師や看護婦の本来の使命以外の何ものでもない。しかし,これだけの説明では「看護は芸術である」ことに誰しもが充分な納得はゆくまい。
そこで,私は先づ芸術という言葉から受ける印象を素人なりに色々考えてみた。
Copyright © 1958, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.