ナースの作文
生甲斐
清水 琴子
1
1名古屋市国立病院整形外科
pp.63
発行日 1958年4月15日
Published Date 1958/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910588
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先日私の属する或る会でデスカツシヨンがあるから来るようにとの電話があつたとのこと。何気なく行つてみた。丁度10人程で盛んに「生ぎがいについて」話していた。その前にどの様な話が出たのかわからないが,Nさんが生きがいなど実際の所感じたことがない。今の私は正直な所,生まれたから仕方なく生き死ぬわけにはゆかないから何となく生きているだけだと云う。又,登山をよくするYさんは山にこそ生きがいを感じる。山に登りついた時は何とも云えない喜びと生きがいを感ずる。次でSさんは生きがいは,本当に苦しんだ後,本当に心より愛することの出来る状態にある時に生きがいを感ずることが出来ると。そして司会者が私にあなたのように医学の道に居る入は,切実な問題として生きがいと云うことがあるでしようとのこと。
もちろん人の生死に直面している私達はそれぞれの場でいろいろのことを感じ,自分の幸を喜こび,病む人々を気の毒だと思い一生懸命に働いているつもりだが,生きがいとそれとを結びつけようとしても,今までそういう場面に於て,生きがいを見出したことはなかつた。それぞれの場にあつて,よかつた!うれしい!と感じた時,自分に生きがいを感ずる程のゆとりがなかつたのかも知れない。たゞよかつた!うれしい!と云うのみで一杯になつてしまつていたんではないか。又本当の苦しみ,本当の喜こびがまだ経験されていないのかも知れない。
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