教養講座 世界史の女性像・3
ローマ帝国の女性たち
井上 一
1
1横浜市大
pp.41-43
発行日 1958年4月15日
Published Date 1958/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910582
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ローマ帝国
前の回にお話しましたように,紀元前1世紀のおわり(紀元前30年)にローマ帝国が生れ,今のヨーロツパ(北欧を除く)の大部分と,今の中近東とよばれる地方,エジプト,パレスチナ,シリア,小アジア(今のトルコ領),メソポタミア(今のイラク)をあわせた大領土を支配するようになりました。このころをローマ帝国の黄金時代といいますが,同時に昔の剛健なローマ人気風は薄らぎ,華美な生活を享楽して,世界の支配者として外国人に接するようになりました。かつてローマの大成をなしとげるために大きな力のあつたローマの婦人たちも,特に貴婦人は,横柄な女性の代名詞として今日でも使われるようになつてしまいました。
ある文人は金持の家の家庭教師になりたいと希望した友人に,その志をひるがえすようにいろいろ説明していますが,その中で≪奥さんのペツトの犬もかわいがつているようなふりをしていなければならず,それを抱いていておしつこを引つかけられても,奥さんの御気嫌をそこなわないため,犬を叱ることもできないのだ≫と言つています。またローマ皇帝の皇后たちの抱いた野心は有名なもので,自分の前の夫との間の連れ子を皇帝にしようとして現在の皇帝を毒殺し,子供を皇帝にしてそれを操ろうとしたのですが,煙たがられて,子供に毒殺されてしまつた人もいます。
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