随筆
学道則愛人—林雄造先生のこと
高橋 益夫
1
1米沢市置賜病院眼科
pp.27-28
発行日 1958年3月15日
Published Date 1958/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910554
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北国では惜しむ暇もないうちに短い秋が過ぎ,嚴しい冬を迎える。“杜の都”仙台もこの例外でなく,激しい泉ケ岳颪しが冬の最中に荒れ狂う。しかし,都心を廻る環状線に面した北四番丁の一角,東北大学眼科教室は一歩扉を開けて入ると,活気に溢れた若々しい萠えいずる春の気配を感ずる。それにもまして温い雰囲気が,始めて訪れる外来者にも犇々と感ぜられる。これは桐沢長德主任教授の温容溢れる人格によるものが多いことは言うまでもない。この桐沢長德教授の前任である林雄造教授も人格者の挙れ高く,相次いでこのような教授の許に教えをうける東北大眼科の方々は,果報者といわねばならないと思う。
若くして学界のホープとうたわれ,敬虔なクリスチヤンであり,弟子を愛すること人後に落ちない桐沢長德教授を迎えて,安心して定年退職なされた林教授は,戦中戦後の困難な時期を遙か故郷を離れた東北の地で斯界のために盡力なされ,眼科学会が仙台で開かれた折の特別議演を最後の舞台として教授の職を退れたのである。今から皆様に御話申上げようと思うのは,この林雄造教授に師事した弟子の員一として先生より感銘をうけた数々を,御伝えし今後の参考になれば幸と考える。
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