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患者の心理(Ⅲ)
平井 富雄
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1東大衛生看護学科
pp.49-51
発行日 1958年3月15日
Published Date 1958/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910563
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Ⅳ.患者の心的態度に影響を及ぼす因子
以上述べたような,患者の心的態度は,しかし患者全てに認められるわけのものではない。患者の中には,外界と全く正常とかわらぬ接触を保つものもあり,病気であることを素直に認めて,その範囲内でなおも現実的な生き方をしているものもあるのである。また上に述べたように患者は,いろいろな方向のちがつた心的態度をとりうるものであるが,この場合誰もが,同じ型の心的態度を示すとは限らない。
ではこのような差異は,どうして生ずるのであろうか?つまり患者の心的態度を決定する因子には一体どのようなものがあり,どれが重要で,どれがよりおもな条件となるのであろうか?つぎに,これらの点について,いささか考察を加えてみたい。健康とは精神,身体ともに健全な働きをなしうる状態のことであるが,より詳しくみると,精神的には合理的判断と意思的決断により自由な生活を営むことが出来,身体的には,精神の働きに沿つて,大きな疲労や,倦怠感なく,自由に動きうる状態が健康な状態といえる。従つて身体的疾患に侵されると,先ず身体活動に制限が加わり,疾患が与える肉体的苦痛,生の脅威などにより精神的には,死の恐怖や,沈うつ,あせり,不満足感があらわれて,精神の自由を束縛する。すなわち,疾患は,個体の上に肉体的反応を惹起すると同時に,多かれ少かれ精神的反応(Reakt—ion)を起しているのである。
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