特集 老人病の知識と看護
老人特有の疾患
1 神経精神疾患
加藤 正明
1
1国立精神衞生研究所
pp.28-34
発行日 1957年10月15日
Published Date 1957/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910440
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老衰現象はすべての機能の衰退として現れるのであるが,心身機能の障害として最も著しい適応障害をひき起すものは,いうまでもなく神経系統の退行現象であると思われる。ことに精神神経機能の衰退には,内分泌機能や諸臓器機能の退行のみならず,脳髄を中心とする中枢神経系の退行現象が,まず問題にされなければならないであろう。
中枢神経系の退行・老哀を問題にするさい,2つの現象を区別して考えるのが,一般常識となつている。すなわちすべての老衰現象にみられる生理的な退行現象と,疾病として現れる病的な退行現象との区別である。前者の生理的退行現象は,神経系を含めた諸機能にあらわれるが,中枢神経でいえば脳神経細胞の変性であり,脳の萎縮である。一般に老人の脳は壮年期にくらべて100グラム前後すくなくなつているといわれ,脳の回転もふつうより狭くなり,脳溝が開いてくるわけだが,これと併行して神経細胞にいろいろの変化がおこつてくる。
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