特集 老人病の知識と看護
老人特有の疾患
2 神経系(精神科)疾患の看護
高林 ヨシ
1
1桜ケ丘保養院
pp.35-38
発行日 1957年10月15日
Published Date 1957/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910441
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老人に特有な精神科領域の疾患と云うと老人痴呆,脳動脈硬化性精神病アルツハイマー氏病等であるが単に老人におこる疾患とすれば更に,進行麻痺精神分裂病,躁鬱病症候性精神病,神経症その他を加えなければならない。これらの看護は他の壮年期以前の患者の場合と一般的心構に於いては勿論異るところはない訳であるが,併し老人に於いては精神的,生理的退行期である事によりいくつかの特殊性がある。即ち精神面に於いては高等感情の鈍麻退行がおこり一般に頑固,短気,易怒,我儘,丈嗇,被害念慮の傾向があり,殊に発病の初期に従来の性格が強調されてくる事もあるし,全く性格変化を来たす事もある。又器質的痴呆過程に伴い知的水準低下殊に記銘,記憶の障碍が屡々見られ,盗まれたといつて置き忘れた事が多く,自分の部屋を間違えたり,他人の見わけが全くつかない事などがあつて,それが上記の人格変化と相まつて家庭にあつては,家庭内緊張増悪の源泉となつたり,病院に於いては,争いの元となる。身体的面に於いては種々の慢性疾患に罹り易く,抵抗力の脆さ,栄養障碍,運動機能の減退,遅鈍等が特徴であるから,これらをしっかり呑み込んでおかなければ完全な看護は行われ難い。
近年文明国では国民の寿命が延びたので老人の人口が増した為老年の病人の取扱いや,レハビリテーシヨン(更生指導)に就いて関心が高まつているが,この事に就いて精神科の関係者は特に大ぎな関心を持つている。
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