特集 こういう看護を何故すべきか
嘔吐の看護
星野 英子
1
1千葉大学附属看護学校
pp.122-125
発行日 1956年10月15日
Published Date 1956/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910206
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嘔吐とはどういうことか。どうして起るか。嘔吐とは胃腸の内容物が食道を逆行して吐出される現象であり,その機序としましては,嘔吐時の種々の器官の作用は嘔吐中枢により支配せられる。嘔吐中枢は延髄の深部にあり,直接刺激(中枢性嘔吐)及び反射的に身体末梢部よりの刺激(反射性嘔吐)により興奮する。中枢性嘔吐は器械的(例えば脳圧亢進等)及び化学的(例えば薬物作用,細菌の毒素の作用,糖尿病アシドーシス,肝機能不全等の代謝障害による異常新陳代謝産物の作用)の刺激の他に,大脳皮質よりの刺激(強烈な感情の興奮,不快な臭,味等による)がある。反射性嘔吐を起す身体末梢部よりの求心性刺激は殆んどあらゆる部位よりくるが(例えば胃,胃以前の消化管,腹膜,子宮,腎結石,胆嚢,心臓,耳性等)特に迷走神経知覚枝,三叉神経,舌咽神経等を通じ,中枢へ伝達される。嘔吐中枢よりの遠心性刺激は,迷走神経運動枝(胃,食道,喉頭,咽頭)脊髄神経(腹筋,呼吸筋)その他の自律神経(皮膚血管,汗腺等)を通じて関係各器官へ伝達され,ここに“嘔吐”なる複雑な現象を呈するのである。
嘔吐の原因として考えられますことはいろいろで,消化器疾患のみならず汎ゆる臓器の疾患においてみられる。しかも器質的疾患とは限らず機能的ないし心因的に起るものもあります。
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