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逍遙性チフス腸穿孔による急性汎發性腹膜炎の治驗例
岸 達朗
1
1大河原外科病院
pp.366-369
発行日 1948年9月20日
Published Date 1948/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200369
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緒言
腸チフスの經過中腸出血と共に恐るべき合併症として腸穿孔のある事は,既に一般臨牀家に知られてゐる處であるが,此の治療を内科的處置にのみ委ねる時は豫後は絶對に不良であり,唯外科的處置に依つてのみ,而も一部の治癒を期待し得るに過ぎない。思ふにその主なる理由としては,原疾患による高度の衰弱の爲に手術的侵襲にすら堪え得ない場合の多い爲と考へらる。然るに腸チフス性腸潰瘍の穿孔ではあるが,いさゝか是と趣を異にするものがあり,即ち所謂逍遙性チフスと稱せられる場合の腸穿孔である。
逍遙性チフスとは自覺的症候が初めから輕微で,僅に全身倦怠或は食思不振を訴へる程度に止まり,患者は敢えて就褥することなく多くは自己の職業に從事し,チフス流行時でなければ,其の診斷は甚だ困難である。而もかゝる輕症チフスに於ても腸穿孔の如き重篤なる合併症の突發が必ずしも稀でない事は屡々文獻に見られる處である。
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