講座
喘息
北原 静夫
pp.6-9
発行日 1956年1月15日
Published Date 1956/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910029
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一般に発作性に突然呼吸困難が起つて呼吸の苦しくなる病気を喘息といつております。普通気管支喘息によることが最も多いのですが,心臓病のある人も夜間発作性に呼吸困難を起すこともあり,重い腎臓炎の末期に尿毒症を起した時にも喘息のような発作を起します。その他老人等で咳や疫が多く出て呼吸が苦しく喘息と考えておる人々の中に案外肺結核の人があるものです。之からは気管支喘息のお話をいたします。
喘息(アストマ)と云う言葉はギリシヤ語で「ぜいぜいすること」を意味し医学の祖と云われるヒポクラテスが既に喘息のことを述べており,発作の詳しい医学的の記載は今から約2250年も前に見られるから,随分永い間人類が苦しめられた病気であります。当時勿論その本態は分らなかつたのですが,17世紀の頃ウイリスと云う英国の医者が自身喘息持ちであり,この病気は気管支周囲の神経が刺激されて気管支筋が收縮する結果,呼吸困難を起すのであろうと想像しました。18世紀から19世紀にかけては色色な説がでました。喘息患者は湿疹や蕁麻疹,偏頭痛等に入れかわりかかり易いので,皮膚や粘膜が種々の刺激ではれ易い体質があり,かような人は喘息にかゝることが多く,その体質は遺伝することが分りました。1860年ソールターは動物の臭で喘息発作を起す例を見て,鼻からの反射が重要な関係があると考えました。
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