講座
結核療養者の安静問題について〔Ⅲ〕
河上 利勝
1
1都立広尾病院
pp.21-25
発行日 1955年12月15日
Published Date 1955/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909992
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5.ドツクの学説
この説は結核症が肺上野に好発する理由を歯切れよく説き明かし,進んでは結核療養には横臥こそ肝要であると述べております。
今之を植村博士の論文を借りて説明致しましよう。之はクールナンドにより創始せられた目新しい独創的な「心臓カテーテル法」によつて得られた機械論であると云えます。その結論としては肺動脈圧は立位或は坐位では肺尖までも充分に血液を押し上げる力がないので,此処が感染に対する抵抗の弱点となり人間では肺上野に結核が好発するのであつて,このことが,亦病巣の治癒と云うことに重大な関連を持つていると申すのであります。之を今すこしく詳しく説明致して見ましよう。クールナンドの測定によると横臥位に於ける正常人の右心室の收縮期圧は20〜25粍水銀圧であり,拡張期では殆んど零であります。併し,胸腔内は大気に比して陰圧であつて-5粍水銀圧に相当して居りますから,結局肺臓末端の動脈圧は右心室收縮期では20〜30粍水銀圧であつて,拡張期には5〜7粍水銀圧となり,平均15〜18粍水銀圧と推定せられます。此の15〜18粍水銀圧は19〜23糎の血液柱の示す圧に等しいのであります。
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