講座
整形外科と神経症(2)
手島 宰三
1
,
佐々木 正和
1
1国立山中病院
pp.16-20
発行日 1955年12月15日
Published Date 1955/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909991
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3)神経痛と神経症
民間の素人は神経痛と言う言葉を広義に解し,気安く使用しているから,その内容には種々の疼痛性疾患が含まれている。中枢神経系統の疾患の場合に症候性精神異常症状脳症を伴う事は普通である。又頭部外傷に伴う神経症に就ては前述したが,末梢神経疾患殊に外傷により疼痛乃至シビレ感を貽すとその症状について甚だ恐怖心と執着を起し,心因性に神経症々状を伴つて来ることが多く,又心因性疾病願望神経症に於いて軽度の末梢神経過敏乃至麻痺症状が利用されることが他の疾患に比して多い。神経痛殊に根性坐骨神経痛を整形外科的に治療するに際し,本態的診断をなし,手術を行う場合には適応を厳選することは勿論であるが,時に患者の自覚的症状の誇大な訴えに引かれて,手術を実施し,術後神経過敏症乃至シビレ感の訴えが増強し,神経症様相を呈して来て,その取扱いに困まることがある。臨床上教科書的な真性乃至症候性神経痛症状は少く,多くは傷害程度が患者の訴えに比し軽く,複雑な要素を含んでいるから,一応神経痛性神経症の概念をも心得て居らねば所謂神経痛患者そのものを正しく理解することが出来ないし,又根治的治療が出来難い。
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