講座
整形外科と神経症(1)
手島 宰三
,
佐々木 正和
pp.134-141
発行日 1955年10月15日
Published Date 1955/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909947
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緒言
近代産業文明は戦争と平和を繰返しつゝ急速に進展し,人間生活も豊富なものになつて来た反面,万事が機械の活動に追い廻され,機械的となり,のんびりとした人間味のある生活が出来なくなつたので,都会人は多少共神経過敏乃至衰弱気味である。一方国家と国民とか資本家と労働者と言う種々利害関係上紛争を起し易い社会体系では人間を形式と規則で律せざるを得ない傾向がある。権利,義務の観念は社会の合理化,健全化と言う良い結果をもたらした反面賠償とか補償とか言うむずかしい問題を生じた。人間はあまりにも悲慘な天災とか戦争に再会すると放心し,自主性を失うにもかゝわらず,身辺の細小な利害関係には敏感に反応し,気をつかうものらしい。中には民衆を保護する法規殊に社会保障制度を悪用する者もある。又経済的に苦しい社会に於て疾病は重大な恐怖を感ぜしめる。そこで神経症患者が増加し,整形外科医としてこの方面に関して無関心でいられなくなつて来た。本症は社会問題として重要なものであるので,かゝる新らしい問題に対して概念を心得て,取扱いを誤まらぬ様に仕度いので考察を試みた。
神経症を伴い易い整形外科的疾患は
1)頭部外傷と神経症
2)災害と神経症
3)神経痛と神経症
4)骨,関節結核と神経症,である。
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