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天職(2)
小巻 元隆
pp.66-69
発行日 1955年6月15日
Published Date 1955/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909860
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日本が1等国へのスタートを切つて,まもない明治8年6月の5日,広島市鉄砲町で誕生した“山本ヤヲ”は,お人好しの父と,しつかりものの母の手によつて,幼少時代を幸福にすごしていつた。母の強い気性をそのまま受けついだ“ヤヲ”は,早くから他人と違つたところがあつた。そして或る日“ヤヲ”は学校の先生になろうと決心した。親の定めた縁組をそのまま受け入れてゆくということは,“ヤヲ”にとつて何か遠いことのように思えるのだつた。両親や2人の兄の強い反対にも“ヤヲ”の決心は変らなかつた。しかし明治27年,日清戦争が始まるころ“ヤヲ”が見たものは,毎日のように傷ついて宇品港へ帰つてくる兵士たちの痛ましい姿と,これを母親のようにいたわる看護婦たちの尊い姿だつた。“ヤヲ”は明治27年,日赤広島支部の看護婦養成所へ入つた。
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