人
看護を天職として—東京医大付属病院看護部長 小原良衛さん
森 日出男
1
1京都府立洛東病院
pp.20
発行日 1973年12月1日
Published Date 1973/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205176
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この人,小原良衛の中に小原良衛はいない.看護があり,看護婦があり,そして病院がある.それがこの人の生命そのものである.生命そのものだからすべてであり,純粋である.この人との長いおつきあいの中で,お座なりの仕事を見たことがない.1つひとつの仕事にこの人の生命の燃焼をみた.燃焼は時に直言となる.この人にどなられ説教された若い医師も数多く,くいつかれた医長・院長も多い.そのくせ,それらの医師に母のごとく慕われ,親分のごとく一目おかれてきた.弱体の看護婦をその両翼に包みこんで胸をはる親鷹でもある.そのうらに,人の悲しみと共に泣き,人の成功・幸にも涙して共に喜こぶ人柄を秘めている.
大病に倒れたそのあとも,この人の炎はおとろえることをしらない."生命ある限り仕事を続けます"というこの人の言葉は,"コトバ"でなくて生命の躍動である.数年前に勲五等をいただいたことも,この人にとっては朝の食膳に香わしい漬物が出た程度のことではなかったろうか.とにかく自分に関することは実に恬淡としている.自分をおしやってしまった5尺の痩躯は,今日も明日もただひたむきに歩き続けていくことであろう.
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