医学のあゆみ・39
局所ストレス
杉 靖三郞
pp.21
発行日 1955年2月15日
Published Date 1955/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909747
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個体が,傷,寒さ,暑さ,飢,癆労,恐怖,不安などの肉体的ならびに精神的な侵襲刺激にさらされると,その個体全般にわたつて,特有な形態的ならびに機能的な変化がおこる。たとえば血圧低下,脈摶減少,血液の濃縮,好酸球が減少などの症状がおこる。これを“全身適応症候群”(GAS-General Adaptation Syndrome),または“全身ストレス”とよぶ。
これに対して,局所的に直接刺激をうけると,その部に傷害をひきおこすが,そこには壊死がおこつたり,萎縮したり,その他肥大したり,細胞が増生したりする反応がみられる。全身適応症候群,すなわち全身ストレスの学説をとなえているカナダのモントリオール大学のハンスセリエ教授(Hans Selye)は,この局所反応を“局所適応症候群”(LAS Local Adaptation Syndrome)と考え,綿密な実験と観察をつずけた結果,一見何の類似性もないように見える。全身適応症候群と局所適応症候群との間に密接な関係のあることが示された。そしてセリエ教授は“局所ストレス”の説を提案した。
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