医学のあゆみ・38
グルカゴン
杉 靖三郞
pp.41
発行日 1955年1月15日
Published Date 1955/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909730
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膵臓は,外分泌のほかに,内分泌をやつており,この内分泌物質(ホルモン)としては,インシユリンが知られている。インシユリンは膵臓のランゲルハンス氏島から分泌され,血液のなかの糖分(血糖)を減少させる作用があり,したがつて,糖尿病にもちいられるものであることは,周知であろう。すでに,1921年BantingとBestによつて抽出され,今では糖尿病の治療にはなくてはならない藥品になつている。この功績によりこの2人は1924年にノーベル賞をうけた。
ところが,膵臓からは,インシユリンのほかに,もう一つのホルモンが分泌されているのである。それは,インシユリンとは逆に,血糖を上昇させるらしく作用があり,仮想物質として,すでに1924年に,Kimballらによつて“グルカゴン”(glucagon)と名づけられていた。それが最近になつてくわしく研究され,その存在がはつきりしてきたのである。
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