講座
病氣を氣にするノイローゼ
土井 正德
1
1最高裁判所
pp.14-17
発行日 1955年1月15日
Published Date 1955/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909724
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1.その訴え
病気を気にして仕方がないというのは,すべての(ノイローゼNeurose)(ニユーローシスneurosis)神経症に共通した重要な特徴の1つである。頭痛,頭重感,めまい,疲れやすさ,気分がすぐれないこと,咳,痰,おなかがはること,食欲の不進,種々の腹部痛み,腹部の不快感,胸部の圧迫感や痛み,便泌,下痢,不眠,夢が多いこと,朝おきたのち気分が悪いこと,その他何でも身体のどこかに不快な感じあるばあいには,大変それを気にして,自分が知つている病気のどれかではないかと心配し,その大げさな心配は自分一人でしまつておくことができないで誰れかに訴えないと気がすまない。そしてその訴え方も大げさで,大変な誇張がある。お話の内容が大げさであるとともに,喋りかたも,声の調子や抑揚も,顏の表情や態度などもすべて大げさである。
そうしてこの自分が想像した病名について,あれやこれやと考え,すつかりその病気にかかつているにちがいないと思いこむ。想像の病名は一般に知られた病名のすべての種類におよぶもので,しかも相当重病だと考えられる種類のものが多い。結核,梅毒,おもい精神病の初期,脳炎,脳膜炎,肋膜炎,肺炎,胃潰瘍,胃癌,腸癌,肝臟病,その他いろいろの種類がある。それに,そのときどきの社会の事情によつて,とくにとりあげられた病気がある際には,自分の苦痛は,てつきりのその病気だろうと気がかりになる。
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