講座
肝臓の病気
高橋 忠雄
1
1東大
pp.6-10
発行日 1954年11月15日
Published Date 1954/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909683
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肝臓の病気ということは,今ではひとつの流行語のようでさえある。十年前には人の口に上ることのほとんどなかつた肝臓病が,今では最もポピユラーな病気のようになつた。私どもにはこれは意外なことであり,世の中の人人が何でも肝臓が悪いと考え,心配している様を見ると,かのモリエールの“気で病む男”(マラード・イマジネール)を想い出す。これは,ひとつには,肝臓という臓器が,その単純な組織像に似あわず,きわめてふくざつな機能の所有者であり,アレキシス・カレルの“人間—この未知なるもの”(Man, the Unknown)に真似て“肝臓-この未知なるもの”といつてよい位に,その生理学の未開拓の面を藏していることにもよるのであろうが,いろいろと考え過ごして行きすぎのあることは事実である。肝臓の病気は決してそんなにむやみに多いものではないということを正しく認識して頂く為にと,編集者の要請に応じて,簡単に肝臓疾患の概略を述べようと思う。
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