講座
ザルコマイシン
石山 俊次
1
1関東遞信病院外科
pp.11-14
発行日 1954年11月15日
Published Date 1954/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909684
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1.癌の治療ということ
癌は不治の病であるといわれる。不治の病は仔細に検討すればひとり癌に限らないわけであるが,医療看護の面からいつて,診断が確定したときには,癌の進行性と再発と転移,そのどのひとつの性質をとりあげてみても,現代の医学が常に確実に制禦しうるものはない。癌にはこれという予防注も考えられていない。その大きな理由のひとつは人体にできるすべての癌の原因が不明だからである。
それにもかゝわらず,いつぽうでは癌の根治率がしばしば問題となる。胃癌は手術によつて8〜15%のいわゆる永久治癒率をみるとか,乳癌は根治手術によつて40%治癒するとか,放射線療法を併用することによつて60〜70%の根治率をあげることができるなどである。しかしこれらの数字の裏面には,甚だ重要な省略がかくされていることに注目しなければならない。それは適応といわれる撰択性の仮定であり,早期発見と早期治療ということがそれである。8〜15%というのは手術可能な胃癌の遠隔治癒率である。乳癌のばあいも全く同様であつて,癌の実態とは全く無関係な数字といわなければならない。
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