教養の為に
匂いと香り—人によい感じを與えるために
山西 貞
1
1お茶の水女子大学
pp.151-154
発行日 1954年4月15日
Published Date 1954/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909563
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動物園に行くと各檻毎にその動物特有のにおいがする。キツネの檻の前では目をつぶつていてもキツネだなと判る。馬小屋は馬臭く山羊小屋は山羊くさい。このように動物は総て特有臭を持つている。人間はどうであろうか。私達がよく経験することであるが,数十人の人が1室に長いこと入つている場合,外からたまたま入つて行くと,女の集りなら女臭く,男の集りなら男くさく,それぞれ特有の匂がむつと鼻を衝く。このことからも判るように人間もやはり多かれ少かれ特有の体臭を持つているのである。この体臭の第一の原因は皮腺(汗腺及び脂腺)からの分泌物によるものである。これらの分泌物は,分泌された直後でも或程度の不快臭を持つが,続いて体表に附着中に化学変化が行われ,更に厭わしい悪臭となる。入浴を長く怠る時はこの悪臭が増して他人に不快を与える程になる。
この体臭は食物に強く支配される。欧米人から見れば日本人は沢庵くさく,朝鮮人はニンニク臭いという。日本人から見れば欧米人はバター臭い。
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