2頁の知識
水の代謝
吉利 和
1
1東京大學田坂内科
pp.22-23
発行日 1953年9月15日
Published Date 1953/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909402
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人体は,その体重の60〜70%という大部分が水から成つている。そして,生体内で行われる種々樣々の新陳代謝は,いろいろの物質がこの水の中に溶けているという状態で行われるのである。だから,生体が生きているということは,つまり,生体の水の中で,種々なる化學的變化が行われているということになるのである。
この生体内の水は二つの部分に分けることができる。一つは,細胞内にあるもので,これは全部の水の5/7を占めているもので,上にあげたような重要な代謝過程は,主としてこの細胞内液において行われるものである。もう一つは,細胞外液であつて,これにもまた二つの種類がある。一つは組織間液といつて,組織細胞をとりまいている液体であつて,他は血漿といつて,血液の中で,血球を除いた部分をいうのである。これら細胞外液の任務は,種々の部位から攝取した榮養物を運搬して,貯藏部位に持つて行き,また貯藏部位から,体内のすべての臓器組織に運搬する。また組織で出来た老廃物を運搬して,腎臓や皮膚から排泄させ,あるいは肺などから外に出すことになる。そのほかに,生体の水の中には,必ず電解質,つまり種々の無機の鹽類が含まれている。この電解質の濃度が重要な働きをもつものであつて,たとえば水素イオン濃度というようなものは,液体の酸性度をきめるもので,余り極端な変動を起すと,生命を維持することができなくなる。
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