2頁の知識
麻疹肺炎
中鉢(ちゅうばち) 不二郞
1
1國立東一病院二宮分院
pp.24-25
発行日 1953年3月15日
Published Date 1953/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907260
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麻疹は病原體がまだ發見されていないので,チフスやヂフテリアの樣に一般的に行われる免疫法が出來ていない。それで吾々は輕症か重症かの差はあるが,一生に一度はかかる機會がある病氣である。文化が進み人の交通がはげしくなると,はしかの流行もたびたびやつてくるものである。小都市や村落などでは數年毎に流行するが,大都會東京のような所では,どこかにいつでもあるかのようで,小流行は毎年,大流行は2〜3年毎に來るものである。それ故,まだはしかにかからぬ者は年少者だけというようになり,患者は殆んどが子供である。
この麻疹の合併症として色々の病氣があるが,その中で最も心配になるものは,第一に肺炎であろう。これは急に重症となり,死亡するものが多いからである。麻疹肺炎の豫防には,平素の健康度を高めておくことと,弱い子には流行時に,一度罹患したことのある人の血液又は血清の豫防注射,又は近頃の研究によるガンマ・グロブリンの注射をして,發病を全く防ぐか,かるくすます樣にすることがよいのである。一般に肺炎と云うものにはクルップ性(急性)肺炎と氣管支肺炎とに大體分けることが出來るが,麻疹肺炎は後者の方である。麻疹の發疹は,體の表面に出るものを普通發疹と云い,粘膜に出るものを内疹と云うが,この内疹は肺の氣管支粘膜にも出るので,普通一應は氣管支炎の症状が出るものであり,重くなると毛細氣管支炎や氣管支肺炎を起してくる樣になる。
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