時評
最近の集團食中毒について
石丸 隆治
pp.17
発行日 1953年5月15日
Published Date 1953/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201204
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昨年春から秋にかけてしばしば新聞紙上に「集団食中毒」の活字が見受けられ,集団赤痢とともに新聞だねの一つの流行を形成したかの如き感があつた。特に,修学旅行の学童に発生した場合,三段ぬきや五段ぬきで取り扱われ,近年事件が多発しているような印象を与えたようにおもわれる。今年もそろそろ食中毒の季節がやつて来たが,その現状はどうであろうか。
集田食中毒の様相にも時代の変化がみられる。終戦後暫くの間は,配給主食類がその配給元で汚染され,それが配給された広範な地域にわたつて患者が発生したり,またメタノール入りの密造酒により,その販売系路にそつて患者が多発したような事例が多かつた。これに反して,近年は給食方法からみると学校給食・工場給食のような集団給食及びこれに類似した修学旅行等の旅館・仕出しによるものが多くなつた。また食品の形式では,弁当・折詰料理などが目立つており,なおこれらの原因食品としては魚介類及びその加工品特に魚肉煉製品が過半数を占めている。これは,食糧事情・輸送事情の好転に伴い宴会,団体旅行の機会が多くなつたことも一つの理由であろう。
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