講座
子宮癌に就いて
山田 千里
1
1國立仙臺病院産婦人科
pp.19-23
発行日 1952年12月15日
Published Date 1952/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907203
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先日は人工妊娠中絶の話を申上げました。それに就いてはもつと詳しくお話し致したいのですが,機會をみて申上げることにして,今日は方面を變えて子宮癌に就てお話致しましよう。と言うのは近頃病院の外來に來られる患者さんの中に1入か2人は癌を心配して居られる樣です。之は皆さんの醫學に對する認識の深かまつた現れで非常に結構なことであります。癌の中でも子宮癌こそは早く發見し早く手當をすれば完全に治るからです。然しただ無暗に恐れて癌恐怖症になることは感心致しません。正しい癌の知識を以て之を警戒し恐れる樣にして欲しいと思います。
癌と言えばどなたも先ず胃癌,子宮癌を聯想されます位に子宮癌は癌の中の横綱でありまして御婦人の癌の内の約1/3〜1/4を占めて居ります。ではこの癌と言うものはどんなものでしようか,例えば皮膚とか,口や舌の表面,或は胃腸の粘膜,子宮の入口の表面或は子宮の中の方にある内膜とか言う風に人間の至る所の表面を被つている細胞,難かしく言いますと上皮細胞が秩序ある規律的發育又は増殖する性質を失つて小さい赤坊の頃(幼若時)又はお腹の中にいる胎兒の時代の樣な元氣旺盛な發育に變化したものです。即ち何等かの原因で靜から動に變化した増殖状態を言います。
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