原著
妊娠、分娩及び産褥に於ける腹直筋及び肛門擧筋の離開に就て(その1)
高橋 茂
1
1慶應義塾大學醫學部産婦人科教室
pp.177-188
発行日 1950年5月10日
Published Date 1950/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200343
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緒言
妊娠及び分娩時に於ける腹壁及び骨盤底の筋肉に見られる變化の中で腹直筋及び肛門擧筋の離開は最も著しい現象であつて,兩者が高度に生じた場合には分娩後に於ても恢復不充分であり將來性器脱垂,懸垂腹腹壁ヘルニア等の原因となることはHalban及びTandler (1906)以來着目せられている.肛門擧筋の離開に就ては既にAdolph,Pankow,Badwanskyその他に依る記載があり又近くはDe Lee等のTextbookにも記載されているが,腹直筋の離開に關する記載は極めて少く慶應産婦人科教室尾島の記載(臨床産婦13卷8號)を除いてはM.Schlee,Bossi等の報告があるに過ぎぬ.妊娠,分娩及び産褥の經過を追うて之等兩種の筋肉の離開及びその復古状況を觀察した文獻は未だ見當らない.併し之等の筋肉離開の現象は輕視することの出來ぬ事實であり,性器脱垂,分娩時腹壓微弱或は懸垂腹等の原因となり得ることを思えば,その状況を詳細に觀察し,その豫防及び治療策に就て研究することは産科臨床上緊要なごとゝ云わねばならぬ.
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