2頁の知識
“こり”
日野 和德
1
1東大
pp.22-23
発行日 1952年3月15日
Published Date 1952/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907013
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「こり」という言葉を字引でみると「かたまること,かたまり」と書いてある。醫學の方でいう「こり」は筋肉内部にふれるかたまりである。肩がこるという人は多いものであるが,そういう人の肩の筋肉を押したり,つまんだりしてみると硬い抵抗をうけ且つ壓痛を訴える。一般的に言えばこりとは骨骼筋そのものが異常に緊張して,その硬度を増している状態で強く押せば痛いし,押さなくても自覺的に一種の不快感(壓感,牽引感ともいうべき感)があり,此の感じは屡々痛覺に移行する。しかしその痛覺も表在性の刺す樣ないたみと異り重苦しい張るような,所謂深在性の痛みである。患者は筋肉のこりに伴う此の不快感を訴えて來る。
こりについてはまだよくわかつていない事が多いのであるが,この樣な状態の筋肉は攣縮という一種の持續的收縮状態を呈しているのであつて,筋肉がこういう状態になるには大體三通りの原因が考えられる。その一は筋肉を支配している神經を通じての緊張亢進であり,その二は血流の障碍によるもの,その三は筋肉自體の性質としての緊張亢進である。何れの場合でも攣縮状態の筋肉は,正常の收縮力が弱まり,作業能力が低下している。以下この三つの場合の事を簡單にのべてみよう。
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