特集 慢性疾患—明日の公衆衛生のために
神経痛とリウマチ
日野 和德
1
1東大物療内科
pp.64-71
発行日 1956年5月10日
Published Date 1956/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201175
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神経痛とリウマチは一応別の疾患であるが,両者はよく一緒にして取扱われるし,また一般の人々は勿論医者でさえも両者を混同していることがよくある.慢性の経過をとる痛みを主な症状とする点や,治療上色色な共通点をもつていることなどがその理由となつているものであろう.共に甚だ治り難い病気であることもよく知られていて,結核が化学療法によつて治療上に一大進歩をとげた今日においてはこれに代つて長期にわたり患者を苦しめる代表的な疾患となつた観がある.慢性関節リウマチに罹つた或る医者が結核に罹つた方がましだつたと嘆いたことがあつた.結核には肉体的な苦痛が比較的少いが,リウマチや神経痛は痛みという肉体的苦痛の最たるものを主症状とする.はげしい痛みは人間からあらゆる身心両面の能力を奪い去るものであるから,この疾患が人間の生活に及ぼす影響は大きい.長期疾患の常として経済的な問題がつきまとうし,また治療の難しさは患者及び周囲の人々を迷わせて非科学的な療法を頼らせる結果となり,色色な社会的問題の種となるのである.そこで文明諸国においては多くのリウマチ治療センターのようなものがあつて綜合的な研究と治療が行われているのであるが,わが国に於ても近く設立される機運にあるようである.
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