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マツサージ
日野 和德
1
1東大
pp.13-15
発行日 1950年12月15日
Published Date 1950/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906760
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「經驗は科學の一歩前を行く」という諺がある。醫學の領域に於ても經驗的に知られた事から出發して理論づけられ系統づけられた事が多い。身體の一部に何等かの原因で疼痛を感じた場合や肉體的な勞作で疲勞を感じた場合,その部分を撫でさすつたり揉んだりする事は恐らく人類はじまつて以來行われて來た事であろう。我々自身の手を使つて撫でたり揉んだり叩いたり壓したりする事がどんな病的状態に效があるかは大昔から人間が知つていたに違いない。色々とこまかい手技に變遷はあつたろうが,特殊な器具類を必要とせず,これ程簡單で而もこれ程長い歴史をもつている療法はほかに見當らないのである。解剖學や生理學が進歩するに伴つてそれらの知見をとり入れ又色々な實驗的研究も行われた結果現在のようなマツサージとして理學療法の一部門をなしているのである。
マツサージは簡單で誰にでも出來そうなものであるが,家庭でよく行われるところの肩のこりをもみほぐす場合にも上手下手があるように,全くの素人と解剖學や生理學の心得ある者とではその效果にかなりの差がある事は經驗ずみの方も多いであろうが,又專門の術者でもその手技の熟練の程度によつて疾病治癒の成績に著しい差異があるものである。
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