講座 今月の病氣
上気道カタル及び氣管枝炎
日野 和德
1
1東大物療内科
pp.6-10
発行日 1954年12月10日
Published Date 1954/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200854
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1.上気道カタル及び気管枝炎と"風邪"
上気道カタル及び気管枝炎というものを私はここで急性におこるところの所謂"風邪"という症候群に属するものだけについて,述べようと思う.というのはこれらの病気はいろいろな場合におこり得ゐものであつて,例えば麻疹・百日咳その他の伝染性疾患にも伴うし,また刺戟性ガスや塵埃の吸入であこることもあり,気管支炎の症状は心臓疾患や喘息の場合にも現れ,鼻カタルに似た症状は血管運動神経性鼻炎というものにもみられるという具合であるが鼻カルタ・咽頭カタル・喉頭カタル・気管炎等の所謂上気道カタルや気管支炎という言葉からわれわれがすぐに思い浮べるのは"風邪"という疾患だからである.
風邪の症状は誰でも知つている.すなわち鼻がむずむずして鼻汁が出る,のどがいたむ,聲がかれる,咳やたんが出る,そして熱が出ることもあり出ないこともあるが,多くは頭が痛く,時には腰やふしぶしが痛む.このうち呼吸器の症状はどれか一つまたは二つですむこともあり,またのどの症状だけが強く現れて扁桃腺炎といわれる状態を呈することもある.そしてその原因として多くは何か寒い目にあつたからであると考えられている.以上のような事がそのあらましであつて分りきつた事のように思われるが,実は風邪は医学的に見てなかなか難しい問題を含んでいたのである.そのある部分は解決されたが,現在なお未解決の問題もある.
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