「精神医学」への手紙
Letter—ヒステリーは減少したのか?
小川 雅美
1
1多摩中央病院精神科
pp.264
発行日 1992年3月15日
Published Date 1992/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903211
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近年ヒステリーの減少が指摘されているが,ヒステリーは本当に減っているのであろうか。ある意味ではそうであり,ある意味では違うと答えるのが正解のようである。すでに発表した武蔵野赤十字病院での統計資料1)によれば,ヒステリー(ICD-9で診断)は1986年11月から1989年4月までの2年6カ月間に初診した患者の2%(2,357名中47例)に上り,内科,脳外科などの他科からコンサルテーションを受けることの多い(47例中32例が紹介)重要な疾病である。
特徴としては30歳以下の若年者が圧倒的に多く(76.6%),発病初期の段階(33例が発病から3カ月以内に受診)で,多くが他科経由で精神科を受診しており,短期間に症状の消失する軽症例がほとんどであること(65%は3カ月以内に軽快)である。転換型ヒステリーもさることながら心因性健忘などの解離型ヒステリーが多いのも特徴である(43.1%が解離型)。ところが入院中心の精神科専門施設である多摩中央病院の資料によれば,ヒステリーの頻度はより少なく,慢性例,難治例が多い。またヒステリーが部分症状で診断的には心気症,人格障害(境界例)の症例が多い(詳しい統計資料は現在集計中である)。
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