鏡下咡語
ポーランドの街あるき—ワルシャワからクラコウへ
大和田 健次郎
1
1東京学芸大学特殊教育研究施設
pp.126-127
発行日 1981年2月20日
Published Date 1981/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209217
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地味な街並と豪華なホテル
ワルシャワのオケンチェ空港の滑走路は長く,広大であった。空港からZentrumまでは約10キロ,バスを降りると周囲は50mもあるような十字路で,大勢の人が行き交い,市電やバスが忙しく次々と走り去っていた。反対側に渡る地下道内は混雑していたが,紙屑や埃が散らばっている中で,身繕いの粗末な数人の老婦人(でないかもしれない)がひとつまみほどのHeideを紙に巻いて売っていた。何となく憐れであった。この付近を見渡したところ,商店らしいものは目につかず,ブロックひとつを占める大きな7,8階建がならび,街路樹は小さく,初秋の街は灰色で色彩に乏しく,ウィーンから来たせいか,陰鬱な印象であった。
ホテルフォラムはZentrumの角にあり,街の様子とは対照的に,明るい西欧的な近代高層建築である。スェーデンとの合資とかで,設備も西欧と変わらない豪華なホテルである。24階から夕暮の街を見下すと,眼下にはZentrumの大通りがあり,その向こうには,モスクワで見たような,高い塔のある文化宮殿が聳え,遠くまで四角いビルが続いている.しかし街にはホテル名のネオンが2,3見えるだけで,夜の色彩も乏しい。社会主義国では広告の必要がないのであろう。
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