発行日 1950年6月15日
Published Date 1950/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906659
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まずもつて食物中毒又は食中毒という言葉の意味から吟味してみたい。食物中毒(Food Poisoning)という言葉は他の病名とちがい,ばくぜんとした言葉であるためその言葉の内容は人により必ずしも一定していない。食物による色々な健康障碍を含めていう場合もあるし,非常に狹い意味に用いられているといわれることもある。私が以下述べようとする食物中毒は前者に對するいわゆる狹義に解釋した食中毒で,食物による健康障碍一般(Food Injury)と區別して述べようと思う。
まず順序として,食物による健康障碍にはいかなるものが含まれるかというと,第1が自然毒によるものでフグや毒茸の中毒,ソラニンや麥角による中毒など,動物や植物が自然の状態に産生した毒物を食べることによる中毒で,第2は食物中に含まれた寄生蟲卵を,食物と共に食するために罹る種々の寄生蟲病,第3は食物中に附着又は發育していた細菌又は細菌毒素による諸疾患を含むもので,このうちには腸チフス,赤痢,コレラもあるし,またジフテリア,猩紅熱もかぞえ得る。また狹義の食中毒である人のサルモネラ症(Salmonellosis)や腸詰症(Botulisms)が入いる。第4は砒素,燐,青酸加里,昇汞,ストリキニーネといつた藥物化學的毒物が故意か又は過誤のために食物中に混入して起る中毒である。
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