特集 公衆衞生に必要な諸検査
食物中毒菌の檢査法
八田 貞義
1
1日本医科大学
pp.35-45
発行日 1954年2月15日
Published Date 1954/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201331
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まえがき
食物中毒の原因菌として今日れつきとした細菌はサルネラ,ブドウ球菌,ボツリヌス菌の3者である。なおこの他に細菌性と推定される中毒で原因のはつきりしないものがある。かかる場合プトマイン説が頭をもたげやすいが,一般論として食物中毒の原因を有毒アミン(プトマインと呼ばれ,そして細菌の蛋白分解から生ずるPutrescine,Cadaverine,Methylamineなどの有機塩基は,経口的に与えても毒性はない。他の分解物でも経口的に与えたのでは毒性のあるものはない)に帰して考えるよりも,食物中で繁殖した菌或はその生産物の大量摂取という事実を重要視すべきである。
Jordanその他の研究者は各種の菌の増殖した食品が問題であるとし,それ自体は無害なE. coli,Proteusmorganü,Milk streptococciでも適当な食物中に好条件で繁殖すれば人の腸管系粘膜に障害をあたえる有毒物質をつくり得ると推測した。これはよい考えではあるがしつかりした証明がない。ただし近来の流行病学的,細菌学的知見は次第にこの考えに傾いているようである。したがつて昔のプトマイン説が復活したように見られるが,現在考えられている毒物は蛋白の分解によるものでなく,食物の外観や味を変えずに繁殖し得る菌の増殖によるものであることが前と異つている。
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