講座
アルコール中毒患者に対する知識
新井 尚賢
1
1東邦大学医学部神経科
pp.66-71
発行日 1960年3月10日
Published Date 1960/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202050
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"酒は百薬の長"とか"酒は憂いを払う玉箒"あるいは"酒なくてなんのおのれが桜かな"と酒をほめたたえる一方"酒は魔水""酒毒""きちがい水"などと毒物視する文句から"酒は飲むとも呑まれるな""酒と女とバクチ"のようなはなはだ溺れ易いものとしての戒めまで,古来酒に関してはいろいろにいわれており,現代の著しく危険なものとしては"酔払い運転"がある.このように酒に関する各人の受け取り方は古来さまざまで,"飲み友達"も"禁酒同盟"もある.これらはいずれも酒の有効成分たるアルコール,精しくいえばエチルアルコール(木精)の人体におよぼす作用をいろいろ角度を変えてみた上のことであつて,どの言いかたもその意味においてはそれぞれ正しいといわざるをえまい.
ここで少しアルコールの化学的,薬理学的説明を挿入しておこう.まずアルコールという名のつくものに,エチルアルコールの他にプロピールー,ブチルー,アミルー,オクチルー,アルコールがあり,これらはフーゼル油という名のもとに総称されている.その他にメチルアルコール(木精)がある.
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