精神病院の管理・10
アルコール中毒,精神病質
岡田 敬蔵
1
Keizo OKADA
1
1現在:東京都立松沢病院
pp.85-89
発行日 1970年10月1日
Published Date 1970/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204131
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はじめに
精神障害者に対する社会の関心が高まるにつれて,精神病院に対してその任務として要望される事柄は,しだいに多岐にわたるようになってきた.しかしながら,精神病院の現状からは,これら社会より要望されるもろもろの問題に対して十分には対応できない点は多々あるが,また,本質的に,その問題に対しては,精神病院のみがその解決の任務を負うべきではないということもさまざまあるのである.その1例が,精神病質者の問題である,また,アルコール中毒者の問題も精神病質と深いつながりがあるので,同時に広い角度から問題を考えねばならない.
最近の精神医療の進歩,特に向精神薬の登場による進歩は目ざましいものがある.精神医学の最大の課題であるともいうべき精神分裂病についても,いまなおその本態は不明であり,また,現在,わが国の精神病院の在院患者の約7割を占めるのは精神分裂病患者ではあるけれども,その治療は向精神薬の登場によって,薬物療法を中核として,pre-hospital careとpost-hospital careを通じての一貫した治療体系が生み出されるに至った.もちろん,このような一貫した治療体系の具体的な実現は,現実の医療行政の立ち遅れ,世人・為政者の認識の不足のために,いまなお,十分に具体化はされていないけれども,その対策の路線の引き方ははっきりしてきたといっても過言ではない.
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