2頁の知識
下劑の用い方
高橋 忠雄
1
1東大醫學部
pp.28-29
発行日 1949年11月15日
Published Date 1949/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906561
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下劑を使う目的の主要なものは,ごく概括的に云うと,(1腸管内の有害物質を出來る限り清掃したいとき,及び(2)所謂常習便秘症の治療の二つであろう。前者は短時日の適用であるがその作用は徹底的であることが望まれ,後者は長期間連續する必要があり,作用はむしろ緩徐の方がよい。そこで,この二つは使う藥物も用い方も自ら異つている。
第1に,(1)の目的に對しては:食餌中毒や細菌感染の結果起つた腸炎で,發熱,嘔吐,腹痛などの伴うときは,多くは腸管内容の有害物の存在が考えられ,これを出來るだけ早く排除することが最良の治療法である。この目的に一番ふつうに用いられているのは,ヒマシ油であろう。これは炎症のある腸粘膜に傷害を與えないで,小腸及大腸の運動を促すので,甚だ好都合であるが1種の臭氣のある爲,小兒や食慾不振,惡心のある患者には,無臭の製劑を選んだり,他の飲料に浮べて飮ませるような工夫が必要である。又燐中毒の時とか,綿馬根,ザクロ根などの驅虫劑を併用する時には,ヒマシ油は用いてはいけない。これはそれ等の吸收を助長し,中毒を起すからである。そのような場合は,他の下劑,例えば硫苦がよい。硫苦は又赤痢などでは好んで用いられる。
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