発行日 1949年4月15日
Published Date 1949/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906456
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わたしはこの雜誌に原稿を御引受けしてから,実はすつかり困つて了つた。何を書こうかという問題である。見本に送つて頂いた号に丁度森教授の随筆があつて,その中で同教授も困られたことが述べてあるが,私も同樣に基礎医学者であるばかりでなく,附属病院には全然関係がないので,看護婦さんとは一向緑のないこと,同教授以上である。だから一体何を書いたらいいかと随分考えたあげく,ふと思い出したのはEsperanto(以下Espと書く)のことである。皆さんは病苦に悩む人の友としてこれを希望と光明に導く,平和と幸福の使徒たる仕事に從事されている。Espも人類の平和と幸福とを念願して発案され,それを目的として発展してきた言葉で,名さえ希望するもの(esperanto)と呼ばれている。しかもこれが世界に発表されるためには2人までの女性の力が,それなくしては結果が生れなかつおというほどの強さで加わつている。これこそ皆さんに御話し申し上げる好題目だと思いついたのであつた。
Espとは御承知でもあろうように世界共通語である。世界中それ1つにして了おうという世界語ではなく,各國民は母國語の他にそれ1つ知れば,世界中と話し合うことのできる國際補助語なのである。発表されたのは1887年,ポーランド(當時ロシア)のユダヤ人の眼科医L. L. Zamenhofによつたのであつた。10数年間に各國民の間に拡まり,1905年には第1囘の世界大会がフランスで開かれた。
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