書評
―藤井康男 監修―LAIマスターブック
樋口 輝彦
1
1独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター
pp.827
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101687
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日本の精神医療体制は,欧米に比べてさまざまな面で立ち遅れていたが,近年ようやく国を挙げた取り組みが始まった。入院中心から地域中心の医療へと切り替えることで,今後10年間で7万人以上の長期入院患者を退院させるという方針が立てられている。しかし,このような目標を実現するには,乗り越えなければならない課題が少なくない。なかでも,退院後の薬物アドヒアランスの確保は,患者の地域生活に欠かせない。良質で確実な薬物治療が継続されてはじめて,さまざまな心理社会的治療や地域のサポートが有効となるからである。
デポ剤(持効性注射製剤:Long-Acting Injection)は1970~80年代に病床を大幅に減少させた欧米各国で,患者を地域で支えるために不可欠な存在として,重要な役割を果たしてきた。英国のように,統合失調症患者への通院治療の半数近くをデポ剤によって行っている国もあった。
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