連載 大牟田発! 地域の縁側で認知症ケア・4
今日は藤井さん家に行く日
牧坂 秀敏
1
1地域福祉館「藤井さん家」
pp.598-601
発行日 2007年7月15日
Published Date 2007/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100858
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無常観に浸ってはいられない
●騒動の裏側で……
「大変な騒動で,大渋滞ですよ」と出勤してきたスタッフがうんざりした表情でいう。何のことか,まったく分からない。テレビはあっても,ほとんど見ないので,情報に疎いのだ。この日,「廃屋から白骨死体が発見された」と,朝から報道関係者やテレビ中継車が集まっててんやわんやだという。現場は藤井さん家から200メートルほどの距離で,私たちが『いきいき・ほっと便り』を配布している地域の一角だ。
前号で高齢化率の高い町の様子を素描したが,まさに空き家,それも朽ちかけた廃屋が事件によってクローズアップされた。そこは表通りからは,まったく見えないのだが,似たような廃屋はいくつも散見される。あるときから時間が止まり,住む人もなく,ただただ風化されていくだけである。人との関わりや温かな交わりも希薄になり,記憶の彼方に消えていく。
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