フロントライン'99 言語
なにげない「ことば」が患者にもたらすもの—言語学の視点から
植田 栄子
1
1東京大学大学院総合文化研究科
pp.1050-1057
発行日 1999年11月1日
Published Date 1999/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905967
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なにげない「ことば」の意味機能と影響力
医療現場においては,とりわけ正確で,心の通いあった円滑なコミュニケーションが求められていることはいうまでもない.人と人とがお互いの意思伝達を行なうシチュエーションとして,これほど切実で重大な場面はないだろう.
患者はことばには表現しがたい身体症状や悩みをなんとか訴えようとする.時にはいいたいことがあってもなかなかはっきりいえなかったりする.一方,医師はできるだけスムースに命令や説明を患者に伝え,患者から医学的情報を引き出しながら効率よく診察を進めていきたいと考えている.インフォームド・コンセントの問題など,医療におけるコミュニケーションの重要性が論じられるようになって久しいが,日本において実際の診療場面の会話データにもとづく実証的研究は数少ない1,2).
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