フロントライン'99 老人看護
老人のアクティビティを高める試み—アクティビティ・ケアの実践報告
六角 僚子
1
1初富保健病院
pp.1042-1049
発行日 1999年11月1日
Published Date 1999/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905966
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高齢者の生活とアクティビティ
ある老人病院での夕方の風景
1人のスタッフがラジカセとフットケア(足浴)グッズが入ったステキなバスケットを乗せたワゴンをゆっくりと押してきて,すでに住院註)して2年を超える寝たきりのAさんのベッドの脇に止まった.ラジカセにスイッチを入れると,Aさんの好きなナット・キング・コールが甘い声で歌う「モナ・リザ」が優しくそして静かに流れ出した.湯気ともみえないやわらかい空気の動きとともにほのかな香りが周囲にだだよってくる.足を暖めながら,スタッフは,Aさんの家族のこと,故郷のこと,趣味のことなど……と会話を進めながら,ゆっくりと爪が柔らかくなるのを待っている.そして,体全体が暖まったら,「爪切り」がはじまる.足に保湿クリームをたっぷり塗って,夕日を浴びながらパチンパチンと爪を切る豊かな時間が流れる.次第にAさんの表情が穏やかに変わっていくのがわかる.ケアしているスタッフもAさんとともに,豊かな時間を共有しているようだ.
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