連載 買いたい新書
—最首悟著—星子が居る—言葉なく語りかける重複障害の娘との20年
足立 朋子
1
1ジョージタウン大学ケネディ倫理研究所
pp.982-983
発行日 1998年10月1日
Published Date 1998/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905695
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「障害」からみる社会他の人をわかることはできないという意識をもつこと
本書は,著者最首悟さんとそのダウン症をはじめとする重複障害を持った娘,星子さんとの20年にわたる生活をつづったものである.著者は幼児期から重い喘息と向き合い,東京大学では全共闘に参加し組織と向き合い,そして現在は娘の星子さんを通して障害児・者に対する教育,社会福祉という問題に向き合っている.「星子と二十年暮らして,興奮したり気負ったり,ときには幸福を味わったりしてきた.そして生きがいというものが静かに居すわる不幸ということを軸にしているのではないか,そして,そして静かな不幸と密接不可分な,畏れの気持ちもまた生きがいを構成しているのではないかと考える」と,これまでの生活を振り返っている.
「福祉の面で法整備がなされつつある社会と,超法規的な世間のはざまで,星子がどのように生きるかを考えます.法的な社会はむしろ星子の状態にあわせてさまざまな特典を用意してくれるでしょう.しかし世間は星子に合わせることを要求します.五体満足で,人並みの能力という不文律が立ちはだかります.…社会は公平さに基づいて厳しくてもいい.しかし世間は星子をまるごと包みこんでくれないか.世間はその側面も持っているはずです」
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