連載 買いたい新書
—小濱洋央・小濱真実子著—車いすでカリフォルニア
片山 千栄
1
1東京大学医学部保健社会学教室
pp.490-491
発行日 1998年5月1日
Published Date 1998/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905596
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すべての人に暮らしやすい社会とは自立と相互理解を自然体で語る滞在記
本書の舞台である米国では,1990年,「障害をもつアメリカ人に関する法律」(Americanswith Disabilities Act)が制定された.これは,身体に障害をもつ人に対する差別を禁じる法律である.また,カリフォルニア州(以下加州)は,今日では全米に広まった,障害を持つ人々の運営参加により介助者の情報や公共の福祉サービスの情報を提供している自立生活センター(Center for Independent Living)の発祥の地としても知られる.
このように障害をもつ人々を取り巻く環境は,日本とは制度的にも大きく異なるが,これは決して待っていれば助けてくれるということを意味しているわけではない.重要な点は,アメリカ社会,特に加州が,自己責任と自己主張を行なうすべての人々に対してオープンな社会であり,障害を持つということも,言語の違いや肌の色の違いのようなあるカテゴリーの1つとしてとらえられているということである.私事になるが,昨年夏,評者が加州バークレーで過ごした際,さまざまな障害をもった人々が,ふつうに街の中を行き来し,生活しているさまを目のあたりにし,まったく違和感を感じなかった.この経験とも重なり,本書のメッセージは実に説得力を持って語りかけてきた.
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