連載 Clinical Ethics—臨床倫理について考える・4
医療現場における倫理問題の考え方(その1)
清水 哲郎
1
1東北大学文学部
pp.370-373
発行日 1998年4月1日
Published Date 1998/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905571
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ここでは,医療者が患者およびその家族と対応しつつ医療を進めていく現場においてしばしば起こってくる倫理的考察を必要とする問題について,どのように考えていくのがよいかについて,基本的な考え方の筋を整理してみる.以下では,まず〈倫理的〉と言われる問題とはどういうものかを限定したうえで,目的としてどの価値を選択するかという座標軸と,(以下次号)患者・家族とのどのような応対を通して選択に至るかという座標軸に分けて問題を分析,整理し,最後に問題解決のための基本的な手順について考えたい.本論によって筆者が特に強調したいのは,倫理的問題は人間の間で生じるものであって,それに対する解決は,「こういう場合にはこうしてよい,あるいはこうしてはいけない」とマニュアルを作るような形でではなく,むしろ問題がそこから生じてくる人間同士の関係および人間の知の有限性を自覚することによって,私たち人間のお互いに対する姿勢を整え直すというようなしかたでこそ求められるであろう,という点である.
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