研究と報告
地域に伝わる麻疹の看病—伝承とその由来について
渡山 恵子
1
1鹿児島県立大島病院
pp.1090-1093
発行日 1997年11月1日
Published Date 1997/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905475
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はじめに
麻疹は子どもの代表的な病気である.一度罹患すると終生免疫を得るが,感染性はきわめて強く,ワクチンを受けていない乳幼児の間でしばしば流行する,麻疹は約95%のヒトが罹患する1)と言われ,重症例では合併症を併発し,死に至ることもある2).ポピュラーな病気ではあるが,現在においても最も重要な小児急性熱性感染症である.
麻疹は古くは『日本紀略』後編十,長徳四年七月に「天下衆庶煩二疱瘡一.世號二之稲目瘡一.又號二赤庖瘡一.天下無下免二此病一之者上」3)として登場してくる.『古事類苑』方技部,医術・疾病の麻疹の項には,麻疹流行に関する多くの文献史料が原文のまま掲げられている4)が,麻疹は当時の人々にとって恐ろしい疫病であり,ひどく恐れられていたのである.
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