連載 買いたい新書
—堀内成子,飯沼和三監訳—女性と出生前検査—安心という名の幻想
玉井 真理子
1
1信州大学
pp.988-989
発行日 1997年10月1日
Published Date 1997/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905454
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「自己決定」の御旗のもと
本書には,女性という視点を大事にしながらさまざまな分野の専門家が集ったアメリカでのワークショップ「生殖遺伝検査-女性への衝撃-(Reproductive Genetic Testing Impact of Women)」での報告内容が収められている.このワークショップは,米国国立保健研究所が中心になって主催し1991年に行なわれたものである.ワークショップの司会者およびパネリスト,そして本書の編者・執筆者も全員が女性である.女性だけに発言権があるとは思わないが,当事者性の高さということで言えば,中絶一般の問題同様,女性こそが発言しなければという,存在をかけた静かな主張を感じることができる.ただし,ここで問題になるのは,人工妊娠中絶一般ではなく,選択的人工妊娠中絶であり,多くの場合それを前提にしている出生前診断である.
本書の編者であるカレン・ローゼンバーグとエリザベス・トムソンが問題点の概説として述べているように,「90年代の妊娠にはさまざまな生殖遺伝検査と選択肢が提供される」ようになり,「その技術によって従来は不可能だった胎児の情報が出生前に入手できるようになった」ことは確かであろう.しかし,果たして何を「選択」することになるのだろうか? 本当に「選択肢」は増えていると言えるのだろうか?「選択肢」が増えているとしても,女性にとっての「自由な選択の幅」は広がっているのだろうか?
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