連載 ハローベイビー—神戸市立王子動物園子育てストーリー・6
美しい幻想的なお産
谷岡 正之
pp.448
発行日 1998年6月25日
Published Date 1998/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901942
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15年前の夏,まだ見たことがないシマウマの出産シーンを見ようと,仲間と交替で昼夜待機したことがある.ところが予定日を過ぎても一向に産む気配がない.むし暑さのうえ,蚊の襲撃を受けながら今夜か明日かと待ちわびること10日余り,11日目の深夜,やっと待ちわびたその瞬間がやってきた.
母親はそわそわしながら歩き回った末,おもむろに地面に横たわり出産の時を迎える.無事に産んでくれよ,と祈るような気持ちで見つめる.間もなく前足が,続いて頭,肩,胸ときばる度に約10cmずつ押し出されるようにこどもが姿を現す.生まれた瞬間,それは月の光に照らされ,浮かび上がるような幻想的な美しい情景が私の目に映った.今でも忘れることのできない感動的な瞬間だった.
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